自分がワーゲン屋を始めた20年ちょっと前は、まだ車体の価格というのは今ほど高くはなかったんですが、感じている最近の相場等の話です。
20年位前はビートルの高年式(ボロイやつ)がまだ10万以下でゴロゴロ有って、タダなら引き取りますとか、ボロいから3まんえんですねーとかの話で車が入手できたりしました。低年式のビートルでも高くてもショップ売値が150万とか、アーリーバスも200万以下で普通に買えたり。そして、その時はちょうどタイプ3のスクエアバックが流行っていて価格は上がり気味になり、その前に有ったカルマンブームは終わっていて価格は安価でした。
その後、空前のバスブームが来て(移動カフェブームも)、海外で内外装仕上げのバスのフルオーダー販売をやっているショップが国内に数軒有り、アーリーで車体価格が200~250万くらい、欲しがる層も一般の富裕層ではないファミリーとか若者とか。
そのフルオーダーのパテ盛り盛りクオリティの話は別なんで今回は省きますが、アメリカ(カリフォルニア)に日本人のブローカーみたいのが沢山いて、現地でボロイのをなんとなく仕上げて輸出し、その販売価格で利益が出ていたわけです。まだ3000~5000ドルとかでボロいアーリーが買えたりしていたんで。
その頃は「日本人がみんな持って行ってしまう」とかちょっとイヤそうに言われたりしていました。まぁ、売る人がいるから買うわけで。
10年ちょっと前位からはクレージーなヨーロッパやイギリスやアジアの連中が、車体やドライなUSEDパネルを「言い値」で買いまくるようになって高騰し始め、日本人が買える機会が減っていきました。ビジネスモデルも変わり、海外仕上げのフルオーダー屋さんは無くなっていきましたね。
その後円安に振れた時は海外バイヤーの目先が日本に向き、ブローカーみたいのが来て過去にアメリカから平行輸入されたバスをガンガン買いまくって輸出されていきました。アメリカに戻るんではなくて、他の国にいくわけです。なんとなく仕上げられているバスがアメリカで買うよりも安いとかの理由で。ヤフオクではなくて業者オークションに出た、日本人が買わないようなレベルのボロバスも良い値段で買っていくんで、国内での値段も上がっていきました。より金を出す人が得ることが出来るという、当たり前の話ですね。それが外国人というだけで。
そうなると、「あぁ、俺の(ボロい)バスも高く売れるんじゃん」となったわけです。なんで、一時はバスならなんでも高いという雰囲気になってしまいました。実際にその恩恵を受けた人もいたと思います。
国内の業者側も、国内マーケットを考えて輸出するなら売らないという業者さんもいましたし、日本人客に売って「高い」とか「ぼったくり」とか言われるんなら、ノンクレームでもっと高い金を普通に出す外国人に売った方がいいという業者さんもいました。そして、ショップの敷地に転がっているゴミのような朽ちた車体や、エンジンとかの部品はアジア人ブローカーに引き取られていきました。
それから数年。買えるのは買われてしまって個体数も減り気味になり、円高にも戻ってしまってブローカーみたいなのは減っていきました。
その後~今の感じとしては、ここ数年で新規で乗り出す客の層が大きく変わりました。普通なファミリー層はかなり減ってしまい、金持ち、又はド金持ちのおっさんがセカンドカー、サードカーとして所有するなど、旧車界の大衆車から金持ちのホビーに変わってきた感じです。情報があふれる今、ディテールに拘る層もとても増えた印象です。
そして、気になるあなたの所有する車体の価値ですが、「なんでもかんでも高く売れる」はとっくに終わり、「コンディションが良い車体や、価値や付加価値の有る車体は高く売れるかもしれない」となった感じですかね。
まぁ、そもそも「相場」なんてもんは無いような世界で、売り手側と買い手側が一致すれば1万でも1000万でもいいわけです。
若者が気軽に買える位の方がいいのか、今の状況の方が良いのかの答えはありませんが、状況は今後も常に変わっていくと思いますよ。