ドイツ本国純正のNOSの話の続きです。自分がワークショップとしてワーゲン屋を始めた20年前は、まだ「NOS」がどうのなんて話はあまり聞きませんでした。ただパーツ屋から供給されている社外パーツをメインに使って、質の文句を言いながら作業するのが普通な話で、NOSを入手出来る方法も良く分かってなかった。ヤナセでずっとパーツを担当していた鈴木さんがやっていた「VWS」が持っていたのをちょっと買うくらいでしたが、それも段々と無くなってきてしまい、入手に苦労をすることが多くなりました。あとはアメリカのイベント行った時にちょこっと買えたくらいでした。最初の10年くらいはそんな感じでしたかね。
NOSを入手するにはイベントのスワップミートで見つけたり、サンバやイーベイ等のネットで見つけるのが一般的です。ヨーロッパのイベントでは至る所でNOSを置いたブースがありますが、もう皆さん高く売れるのが分かってるんで「超お得じゃん!」みたいのはそうそうありません。バリューを分かってない人が、持ってるものをとにかく処分したいから適当に値段付けて売るみたいなのは、アメリカも含めてホント減りましたね。値段を聞いてびっくりしたりがっかりするのが怖くてだんだん聞くのがおっくうになります。ネットは情報が多い分、物が見つかる可能性も高いですが、物が来ないと最終的なコンディションが分からないんでリスクがあります。紹介されてる時点での間違いも多いし。
しかも一個のパーツをネットで見つけ、チマチマと買って輸入して売るなんてのは商売としては合わないんでやってられません。
日々減っていくだけですが、広い世界にはまだまだNOSが残っています。俺が外国行って毎回大量のNOSを得てくるんで、「外国行けば簡単に大量にNOSを買えるんじゃん」って思うかもしれませんが、それは無いです。ホント毎回這いずり回って、大体暗くて汚い倉庫に入り込んで暑さや寒さ、埃と戦いながら得ています。それ以前にそういった場所に入り込めるようになるまでが大変です。時になんの当ても無く乗り込んで来た感じですが、その為の情報を得るアンテナを張り、さらに長い時間をかけて得た人脈でNOSを大量に持っている人と知り合ったとしても、そこですんなりと買えるとは限りません。
どんなパーツをどのくらい持っていて、それがどんな状態なのかを確認し、それをいくらで買えるのかは実際に直接会って話をして、交渉をしないとわかりません。それをやる大前提として、まず物を見てそれがなんだかがわかり、買っていいコンディションなのかを判断出来て、さらにそれにいくらまで出していいのかを瞬時で判断できないと話が進みません。大体の場合で時間が切られてるんで、話自体を逃す可能性もあります。そこに行く段取りと手間だって大変なことです。
パーツ屋としては、数千種類有るパーツの全てをベストなリプロパーツで揃えることは出来ません。極論を言えばマーケットに「凄い酷いパーツ」と「酷いパーツ」だけしか選択が無いなら、せめて「酷い」をピックして「凄い酷い」が国内で流通しないように努力することしか出来ません。流通は常に変わり、イタチごっこ的な部分もあります。でも、もしゴミしかないパーツのNOSを得れるなら、それを求めるオーナーに選択肢を与えられるようにしたいワケです。
ていうか、自分で使うならそれ使いたいんで。
まぁ、とにかく楽しいんですよ。それを得ることが出来るハンティングが。